同じ招き猫でも、細身で上品な猫、丸く大きな目の猫、鮮やかな色で飾られた猫、素朴な土の猫があります。その違いは、作られた土地の素材、技術、歴史…

同じ招き猫でも、細身で上品な猫、丸く大きな目の猫、鮮やかな色で飾られた猫、素朴な土の猫があります。その違いは、作られた土地の素材、技術、歴史から生まれます。

今戸焼は、浅草・今戸周辺で作られてきた焼き物です。瓦や日用品とともに、庶民が手に取りやすい土人形も作られました。
招き猫の祖形として注目される丸〆猫は、今戸焼の代表的な縁起物です。手仕事らしい温かさ、簡潔な彩色、ころりとした姿に、江戸の土産物文化が感じられます。
今戸焼の魅力は、完成度の均一さではなく、一体ごとに残る作り手の気配です。
愛知県瀬戸市では、明治30年代に日本で初めて磁器製招き猫の量産が始まったとされています。古瀬戸型と呼ばれる猫は、頭が比較的小さく、体が細身で、実際の猫に近い上品な姿が特徴です。
磁器の白い肌には細かな絵付けが映えます。前掛けのひだ、鈴、毛並み、花模様など、繊細な装飾を楽しめるのも瀬戸系の魅力です。色ごとに焼成工程を重ねる作品もあり、華やかさの裏に高い技術があります。

愛知県常滑市で招き猫の生産が本格化したのは、主に戦後です。常滑は土管や大型陶器の産地で、型を使った成形と量産の技術を持っていました。
常滑系の招き猫は、大きな耳、丸い顔、大きく垂れた目、二頭身ほどのどっしりした体、しっかり抱えた大判の小判が特徴です。現在、多くの人が「招き猫」と聞いて思い浮かべる姿は、この常滑系の影響を強く受けています。
高度経済成長期に商店へ広く普及し、商売繁盛のシンボルになりました。
石川県の九谷焼は、赤、黄、緑、紫、紺青などの鮮やかな色彩と、力強い絵付けで知られます。招き猫にも花、唐草、盛絵、金彩などが施され、置物というより装飾美術品のような存在感があります。
明治期以降には海外向けの輸出品としても評価されました。九谷焼の招き猫は、福を願う縁起物と、飾って鑑賞する美術工芸の両方の性格を持っています。
| 産地主な印象注目したい特徴 | ||
|---|---|---|
| 今戸焼 | 素朴で温かい | 土人形、簡潔な彩色、丸〆猫、江戸文化 |
| 瀬戸焼 | 細身で上品 | 磁器、写実的な姿、繊細な絵付け |
| 常滑焼 | 力強く親しみやすい | 丸い顔、大きな目、二頭身、大きな小判 |
| 九谷焼 | 華麗で豪華 | 多彩な上絵、金彩、盛絵、装飾性 |
招き猫を選ぶとき、願いの意味だけでなく、どこで、どのように作られたかを見てみましょう。江戸の物語を感じたいなら今戸焼、繊細な工芸を楽しみたいなら瀬戸焼、定番の力強さなら常滑焼、華やかな美術性なら九谷焼という選び方ができます。
産地の違いは優劣ではありません。それぞれの町が、自分たちの技術で「福の姿」を作ってきた結果なのです。