日本の店先で生まれた招き猫は、いまや世界中のレストラン、ショップ、ホテル、家庭で見られます。英語では「Maneki-neko」「Lucky …

日本の店先で生まれた招き猫は、いまや世界中のレストラン、ショップ、ホテル、家庭で見られます。英語では「Maneki-neko」「Lucky Cat」「Fortune Cat」などと呼ばれます。
なぜ、日本独自の縁起物が国境を越えて愛されるようになったのでしょうか。

明治時代、日本の陶磁器や美術工芸品は海外へ盛んに輸出されました。九谷焼などの華やかな猫の置物も、欧米で日本趣味が広がる中、装飾品やコレクションとして受け入れられていきました。
その後、日本人やアジア系移民の商店、レストランを通じて、招き猫は商売繁盛のシンボルとして各地に定着します。現在では中華街で見かけることも多いため、中国生まれだと思われることがありますが、そのルーツは日本にあります。
招き猫は、説明を読まなくても「こちらへおいで」と呼びかけているように見えます。丸い顔、大きな目、上げた手、金色の小判は、歓迎、親しみ、豊かさを直感的に伝えます。
宗教的な決まりが強すぎず、店にも家庭にも置けることも、海外へ広がりやすかった理由でしょう。持ち主は自分なりの願いを自由に重ねることができます。

日本では、手のひらを下に向けて指を曲げる動作が「こちらへ来てください」という合図です。しかし欧米では、同じ動きが別れの手振りに見えることがあります。
そこで海外市場向けには、手のひらを上に向けた招き猫も作られました。伝統的な姿をそのまま運ぶだけでなく、受け取る文化に合わせてデザインを変えたことが、世界への定着を助けました。
電池や太陽電池で腕を動かす招き猫は、海外でも広く知られています。繰り返し手を動かす姿は遠くからでも目立ち、店が客を歓迎していることを伝えます。
伝統工芸として見ると新しいタイプですが、「人を招く」という役割を最も直接的に表現した現代の招き猫ともいえます。

海外の招き猫には、現地の国旗、服装、食文化、スポーツチーム、ポップカルチャーを取り入れたものがあります。素材も陶磁器だけでなく、プラスチック、金属、木、デジタルアートへと広がっています。
これは日本文化が失われたということではありません。招き猫がもともと、時代や土地に合わせて姿を変えてきたからこそ、世界の人々も自分たちの「幸運の猫」を作ることができたのです。
外国人旅行者にとって招き猫は、かわいい土産物であると同時に、日本の商人文化、焼き物、寺社、江戸の歴史へ入る入口です。
一体のLucky Catをきっかけに、浅草、豪徳寺、瀬戸、常滑、九谷を知る。世界で親しまれているからこそ、招き猫には人々を日本各地へ招く力もあるのです。